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【アリストテレス】と【カイメン】

本日も、りけいのりがお届けします。

アリストテレス

誰もが一度は耳にしたことがある哲学者でしょう。多くの人は、教科書で見たあの彫刻の人。くらいのイメージしか無いかも知れません。

 

今回の記事では、まず最初に、アリストテレスという人がどのような人物であったかを説明します。

 

その次に、え?そんなことまでやってたの?と驚くこと必至な、彼による「動物誌」という著作に触れます。哲学的文脈で語られることの多いアリストテレスですが、「動物誌」を訳した島崎三郎はその序文でこう言っています。

アリストテレースの動物学書は,彼の学問的立場が本質的には生物学を基礎としていることから見て,自然科学のみならず哲学的論文の理解のためにも重要なものであり,西洋の科学文明の礎石とも言うべき書である.

 つまり、彼の哲学的態度が、生物学を元にしていると言っています。これは、中々驚くべきことなのではないでしょうか。

 

 目次は以下のようになっています。

それでは、まず、アリストテレスという人物がどのような人かを説明していきます!

アリストテレスという人

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After Lysippos, Public domain, via Wikimedia Commons

アリストテレス(384BC〜322BC)

西洋最大の哲学者と言われ、同時に「万学の祖」とも言われます。

 

彼の研究をした学問は、倫理学政治学、論理学・形而上学宇宙論天文学、生物学、果ては詩学・演劇学などに及びます。

 

過去に遡ると、知の巨人たちは今では考えられないほど様々な学問に渡って、研究を行っていたりしますが(ニュートンは数学者であり物理学者であり天文学者であり神学者でもあった)、彼の研究領域の広範さは他に類を見ないでしょう。

 

この広範な学問への興味は、人間の本性が「知を愛する」(フィロ・ソフィア)にあると考えた彼をよく象徴しているといえます。

プラトンの弟子として

アリストテレスは、マケドニアの王に仕える医者であった父と、裕福な家庭の出身であった母の下に生まれました。後に生物学に深い興味を持ち、精緻な動物分類をおこなったのも、父から医学や生物に関して様々な知識を受け取っていたからかも知れません。

 

そんな彼は、17(18とも)歳の時に、プラトンが主催していた学校「アカデメイア」の門を叩いて、そこの学生となります。彼らの関係はおおよそ20年つ続いたと言われ、師から学んだ「学校の精神」を受け継いだアリストテレスは、のちにリュケイオンという学校を作ります。アリストテレスの著作は、公衆へ向けたものと、講義用のものとに分けられます。実は現在残っている彼の著作の多くが、リュケイオンにおける講義を目的としたものなのです。

 

教科書では、よく師のプラトンイデア論を批判したと取り上げられます。これは、師の論を全く拒否したというより、それを基盤として彼独自の哲学を作り上げる糧となったということでしょう。

アレクサンドロス大王の家庭教師として

当時、マケドニアの王であったフィリッポス2世は、息子であるアレクサンドロスの家庭教師として、アリストテレスを指名します。この学問における師弟関係は、7年間も続いたと言われます。

 

アレクサンドロスは、アリストテレスから「フィロ・ソフィア」の精神を受け継いだのかも知れません。後に、父フィリッポス2世の意志を受け継ぎ、幾多の政治的困難を経て、大帝国を作り上げました。彼は、非常な読書家となり、戦地に赴くときも本を持ち歩いたと言われています。また、各地で植物や動物を見つけるとアリストテレスの元へ送ったりと、その関係は終生続きました。

アリストテレス生物学とカイメン

動物誌 (上) (岩波文庫)

動物誌 (上) (岩波文庫)

 
動物誌 (下) (岩波文庫)

動物誌 (下) (岩波文庫)

 


アリストテレスは「動物誌」と呼ばれる著作を残しています。この動物分類は、古代世界のどこを見渡しても(古代中国や古代インドをみても)無いほど詳細に書かれた、当時としては唯一無二の業績と考えられています。

 

この著作の中では、約120種の魚や60種の昆虫を含む、500以上の動物に関する知見が、詳らかな観察によって記述されています。

 

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カイメン

 例えば彼は、動物的な特徴の乏しい'動物'として、「カイメン」を挙げています。イソギンチャクやホヤなどと同じ固着性動物と呼ばれる分類にあり、動きに乏しくまた体内の構造も非常に単純な生物です。

 

細長い形状をしていて、群衆している姿はドレッドヘアーのようです。海の底に張り付いており、外見上は全く動くことがなく、ただ波に揺られるだけです。体の各部分に開いた穴から、細胞表面に有る鞭毛の働きによって、体内に水流を作り出します。そうしてできた水流から、水中に含まれる栄養素を吸収しており、できるだけ動かない引きこもりニートの元祖とも言えるかも知れません。

 

実際に現在では、襟鞭毛虫(動物とはいえない)と呼ばれる生物が集まってできたような構造をしていることや、遺伝子的な解析から、カイメンは「動物」の最も原初の一つだと考えられています。

 

アリストテレスは、その細緻な観察によって、植物とも見間違えかねないカイメンを、現代的な見方と同じ「動物」に分類したことになります。彼の徹底的な観察の姿勢は、島崎がいうように科学文明の礎石たりうるに十分だったと言えるでしょう。

まとめ

以上アリストテレスという人がどんな人であったか、そして彼の業績の一つ動物の観察について書いてきました。アリストテレスが動物観察を詳しくしてそれに関する大部の著作まで残しているというのは、中々の驚きなのではないでしょうか。筆者も実際その事実に驚いて、この記事を書いた次第です。アリストテレスという人に漠然としたイメージしか持っていなかった人が、なんとなくどのような人物だったかを知ることができたなら幸いです。

参考文献

・「アリストテレス生物学における動物と植物の連続性について」 中村 公博

http://file:///tmp/mozilla_kouta0/AN10065043-20050000-0001.pdf

Stanford Encyclopedia of PhilosophyのAristotleというページ

Stanford Encyclopedia of Philosophy

 ・Ancient History EncyclopediaのAristotleというページ

Ancient History Encyclopedia

・日本語・英語版wikipediaアリストテレスのページ

アリストテレス 「動物誌」 島崎三郎訳 岩波文庫

放送大学テキスト 「動物の科学」 二河成男・東正剛著著