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【応用数学】知っといてほしい用語と基本【微分方程式③】

本日も、りけいのりからお届けします。

 

今までは,微分方程式のイメージをつかむのが目的でした.

今回から,ようやく微分方程式の解法に入っていきます.

まずは,準備段階です.

紹介の前に知っておいてほしい語句や,解法に必要な数学の基本などを紹介します.

 

何度も繰り返しですが,ここでは,工学などへの応用を前提として,どうやって解くかに焦点を当てます.

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知っておいてほしい微分方程式の基本

  1. 語句
    語句を知っていると,たぶんこれからの説明がすんなり入ってくると思います.


  2. 微分方程式の解法:微分方程式の形によって毎回異なる解法をする!

  3. n階微分方程式の一般解は,n個の任意定数を含む

 

ぶっちゃけ,今回の記事で一番言いたいことはこれです.

詳しく見ていきましょう 

ある独立変数\displaystyle{x }に対する未知関数\displaystyle{ y = f(x) }導関数\displaystyle{ \frac{dy}{dx} }を含む方程式を微分方程式と呼ぶ.

 

そして,微分方程式を満足し,独立変数\displaystyle{x }に対する未知関数\displaystyle{ y = f(x) }を,導関数\displaystyle{ \frac{dy}{dx} }を含まない関係式へ導くことを,微分方程式を解くという.

 

よくわかりませんね.

そこで,以下の例題から,説明していきます.

繰り返しになりますが,今回は用語の詳しい説明はせず紹介のみです!次回以降に詳しく説明します.ここでは,ぜひ,微分方程式のイメージ」をつかんでみてください!

微分方程式の解法って?

では,見ていきましょう!

それと,普通の教科書の微分方程式の分類は,線形かどうかとか,斉次かどうかとか,何階かみたく分類してあると思います.しかし,ここでは,解ける形ごとに分けて分類しています.

  1. 変数分離形
  2. 定数変化法を行う変数分離形
  3. 同次形微分方程式
  4. ベルヌーイの微分方程式
  5. 完全微分方程式
  6. 非線形微分方程式(TypeA)
  7. 非線形微分方程式(TypeB)
  8. 非線形微分方程式(TypeC)
  9. 定数係数線形微分方程式
  10. 非斉次の定数係数線形微分方程式
  11. オイラー微分方程式

連立微分方程式とかもありますが,なんか少し違いうのでこの分類には入れませんでした.

微分方程式の種類

では,見ていきましょう!

それと,普通の教科書の微分方程式の分類は,線形かどうかとか,斉次かどうかとか,何階かみたく分類してあると思います.しかし,ここでは,解ける形ごとに分けて分類しています.

  1. 変数分離形
  2. 定数変化法を行う変数分離形
  3. 同次形微分方程式
  4. ベルヌーイの微分方程式
  5. 完全微分方程式
  6. 非線形微分方程式(TypeA)
  7. 非線形微分方程式(TypeB)
  8. 非線形微分方程式(TypeC)
  9. 定数係数線形微分方程式
  10. 非斉次の定数係数線形微分方程式
  11. オイラー微分方程式

連立微分方程式とかもありますが,なんか少し違うのでこの分類には入れませんでした.

微分方程式の例1:力学(質点の落下)

地上から,初速度\displaystyle{v_0}で質点\displaystyle{m}を鉛直上向きに投げ上げるとする.地面から鉛直上向きを\displaystyle{x}軸としたとき,時間\displaystyle{t} に対する質点の変位\displaystyle{x}を求めよ.またこの時,重力加速度を\displaystyle{g},地面を\displaystyle{ x=0 } ,投げ上げた瞬間の時間を\displaystyle{ t=0 } とする.

まず,この時初期条件は以下のようになります.

 \displaystyle{ t = 0 } の時,\displaystyle{ v = v_0 } , \displaystyle{ x = 0 }

次に,質点に働く力は重力のみです.よって以下の図のようになります.

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質点の落下

ここで,変位\displaystyle{x} と速度\displaystyle{v} と加速度\displaystyle{a}にはつぎのような関係があります.

\displaystyle{ a = \frac{dv}{dt} = \frac{d^2x}{dt^2} }
\displaystyle{ v = \frac{dx}{dt} }

よって,運動方程式が次のようになります.

\displaystyle{ m \frac{d^2x}{dt^2} = -mg }

これが,いわゆる微分方程式です.次にこの微分方程式を解いていきます.

まずは,速度\displaystyle{v}を利用して

\displaystyle{ m \frac{dv}{dt} = -mg }

このように,微分方程式を書き直します.

ここで,両辺を独立変数\displaystyle{t}積分します.このとき,不定積分なので,積分定数\displaystyle{A}が出てきます.

\displaystyle{ \int m \frac{dv}{dt} dt  \ = - \int mg dt  \ + A }
\displaystyle{ v = -gt + A }

よって,速度について解くことができました!さらに解法を続けます.まず,速度\displaystyle{v}を変位\displaystyle{x}で置き換えます.

\displaystyle{ \frac{dx}{dt} = -gt + A }

同様に,両辺を独立変数\displaystyle{t}積分します.この時,積分定数\displaystyle{B}とおきます.

\displaystyle{ \int \frac{dx}{dt} dt  \ = \int (-gt + A) dt  \ + B }
\displaystyle{ x = -\frac{1}{2}gt^2 + At + B }

よって,位置\displaystyle{x}について解くことができました!これが,一般解です.

そして,ここで,初期条件を用いて,積分定数\displaystyle{A}\displaystyle{B}を定めていきましょう.

初期条件を用いて,求めた一般解に代入して解くと,

\displaystyle{ A = v_0 }
\displaystyle{ B = 0 }

このような結果になります.よって,これを一般解に代入すると,こうなります.

\displaystyle{ x = -\frac{1}{2}gt^2 + v_0t }

これは,特殊解と呼ばれます.

 

これで,問題が解けましたね!ちなみに,この解法は変数分離形と呼ばれます.

せっかくなので,速度\displaystyle{v}も求めてみましょう.

\displaystyle{ v = -gt + v_0 }

となります.ここで,時間\displaystyle{t}に対する速度\displaystyle{v}と変位\displaystyle{x}の変化をグラフに表してみます.

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質点の落下における時間と変位の関係

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質点の落下における時間と速度の関係

微分方程式を解き,一般解を求め,初期条件を利用して,特殊解を求めると,時間に対する質点の位置や速度が定まりましたね!

微分方程式の例2:力学(空気抵抗を受ける物体の落下)

地上から,初速度\displaystyle{v_0}で質点\displaystyle{m}を鉛直上向きに投げ上げるとする.また,物体は速度の2乗に比例して比例定数\displaystyle{c}の空気抵抗を受けるとする.地面から鉛直上向きを\displaystyle{x}軸としたとき,時間\displaystyle{t} に対する質点の速度\displaystyle{v}を求めよ.またこの時,重力加速度を\displaystyle{g},地面を\displaystyle{ x=0 } ,投げ上げた瞬間の時間を\displaystyle{ t=0 } とする.

同様に解いていきます.

まず,初期条件は以下のようになります.

 \displaystyle{ t = 0 } の時,\displaystyle{ v = v_0 } , \displaystyle{ x = 0 }

次に,質点に働く力は重力と空気抵抗です.よって以下の図のようになります.

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空気抵抗を考慮した質点の落下



全問と同様に,変位\displaystyle{x} と速度\displaystyle{v} と加速度\displaystyle{a}にはつぎのような関係があります.

\displaystyle{ a = \frac{dv}{dt} = \frac{d^2x}{dt^2} }
\displaystyle{ v = \frac{dx}{dt} }

よって,運動方程式が次のようになります.

\displaystyle{ m \frac{d^2x}{dt^2} = -mg -c(\frac{dx}{dt})^2}

これが,同様に微分方程式です.次にこの微分方程式を解いていきます.

まずは,速度\displaystyle{v}を利用して

\displaystyle{ m \frac{dv}{dt} = -mg -cv^2 }

このように,微分方程式を書き直します.

ここで,この後の積分を考慮して変形します.この変形は,とにかく慣れです!たくさん練習して見極められるようになりましょう.イメージは左辺に未知関数を,右辺に独立関数を集めることです!

\displaystyle{ \frac{m}{c} \frac{1}{ \frac{m}{c}g +v^2} \frac{dv}{dt} = -1 }

両辺を独立変数\displaystyle{t}積分します.このとき,積分定数\displaystyle{A}とします.

\displaystyle{ \frac{m}{c} \int \frac{1}{ \frac{m}{c}g +v^2} \frac{dv}{dt} dt  \ = - \int  dt  \ + A }
\displaystyle{ \frac{c}{m} Arctan\frac{c}{m}v= -t + A }
\displaystyle{ v=\frac{m}{c}tan(\frac{m}{c}(-t + A ))}

よって,速度について解くことができました!さらに解放を続けます.まず,速度\displaystyle{v}を変位\displaystyle{x}で置き換えます.

\displaystyle{ \frac{dx}{dt} = -gt + A }

同様に,両辺を独立変数\displaystyle{t}積分します.この時,積分定数\displaystyle{B}とおきます.

\displaystyle{ \int \frac{dx}{dt} dt  \ = \int (-gt + A) dt  \ + B }
\displaystyle{ x = -\frac{1}{2}gt^2 + At + B }

よって,位置\displaystyle{x}について解くことができました!これが,一般解です. 

おわりに

いかがでしたか?

 

今回は,微分方程式のざっくりの説明と,物理の力学で応用されている微分方程式を例示しました.

しかし,世の中にはまだまだたくさんの微分方程式が存在します!

 

次回は,工学(電気回路・材料力学・機械力学)で応用されている微分方程式の具体例を紹介していきます

www.rek2u.com

本日も、りけいのりがお届けしました。

 

参考文献

1)矢野健太郎 石原繁 (1981),基礎解析学(改訂版)第38版,裳華房

 

2)高遠節夫 ほか (2014),新応用数学 4版,大日本図書

 

3)馬場敬之 ,スバラシク実力がつくと評判の力学キャンパス・ゼミ 改訂2,マセマ

 

4)西巻正郎 森武昭 荒井俊彦 (1990),電気回路の基礎(第三版),森北出版株式会社

 

5)西巻正郎 下川博文 奥村万規子 (1995),続 電気回路の基礎(第三版),森北出版株式会社

 

6)西村尚 (1988),ポイントを学ぶ材料力学(第36版),丸善出版

 

7)西村尚 (2004),機械力学(第12版),コロナ社