本日も、りけいのりからお届けします。
我々を取り巻く環境汚染問題
近年、マイクロプラスチックによる海洋汚染問題や、化石燃料の利用に関する資源・エネルギー問題、気候変動や異常気象に伴う生物種の存続に関わる危機など、人類を取り巻く環境問題は著しいです。
我々人類は、産業革命以降、科学技術を積極的に活用して生活水準の向上を図ってきました。そんな科学技術が"両刃の剣"であることを人類が実感したのは、
などのセンセーショナルな事件です。科学技術による被害を受ける度に、人類は法改正や企業努力、環境浄化技術の開発を通して、問題に取り組んできました。
新しく何かを始める上では、予測可能な問題と予測不可能な問題が発生します。特に、予測可能な問題に対しては積極的な働きかけにより、無害化、もしくは問題の最小化をすることが望まれます。
本シリーズでは、我々を取り巻く環境汚染問題の現状を把握することを目的として、土壌環境、水環境、大気環境における環境問題の現状を俯瞰します。今回は、土壌環境編です。
土壌環境の性質と汚染の移動
まずは、土壌環境が汚染された場合における、被害の特徴について考えます。
ここでは、物質の三態と環境汚染物質の拡散のアナロジーを用いると、土壌汚染に対する理解が深まります。土壌汚染を構成するのは、固体である土壌になります。物質の三態の中で、固体はもっとも原子・分子同士の間隔が密であることが特徴です。原子や分子間の間隔が密であることに起因して、お互いの相互作用は大きくなります。
分子間の距離に依存して、クーロン相互作用や疎水性の相互作用が起こります。また、分子が密であることに起因して、物質の平均自由行程 (分子間の衝突なしに進める距離)は小さくなります。以上のことから、土壌環境に環境汚染物質が放出された場合、次のような特徴を示します。
- 土壌中の環境汚染物質は拡散が難しい。汚染の移動が水環境、大気環境と比較して小さい。
- 土壌中の環境汚染物質の分離は難しい。分子間に強い相互作用が働いており、分離にはエネルギーを要する。
- 土壌中の環境汚染物質は検出が難しい。土壌中では分子が密に存在しており、感覚器を通しての検出等が困難である。よって、汚染の発見が遅れる場合が多い。
端的には、以上が土壌汚染の性質となります。このことを踏まえて、2020年現在における土壌汚染の現状を俯瞰してみましょう。
土壌汚染問題
土壌汚染問題を把握する上で重要なポイントが2点あります。
- 土壌汚染対策法のカバーする土壌は地表から深さ10m
- 土壌汚染は自然に発生する場合、人間の活動に伴い発生する場合がある
参考: *1
特に、後者は重要な観点です。環境汚染をイメージすると、多くの方は人間の生産活動に伴って生じた環境被害をイメージすることが多いことかと思います。しかし、鉱脈等から流出する重金属等は自然由来の汚染であり、我々人類は予防をすることが出来ない問題も存在するのです。汚染とは、あくまでも人類を主体としたときの、主観的な事象に過ぎないことが分かります。
土壌汚染に関する近年の推移は次の通りです。
土壌汚染関連法の施工に伴い、2018年における調査事例は2000年と比較して11倍程度となっています*2a。
土壌汚染において着目すべきは、次の物質です。
以上をまとめると、次のように結論付けられます。
- 未調査の土壌汚染は多数存在することが予想されることから、今後も環境のモニタリングが重要となる。
- 重金属においては鉛が主な汚染物質である。
- 有機化合物として、トリクロロエチレン等の有機塩素化合物による汚染除去も重要な課題となる。
国外においては、未だ土壌汚染は発生しています。処理の難しい土壌汚染に対する環境計測・浄化技術の開発、普及が求められます。
おわりに
現代における、主な土壌汚染問題は○○であることを学びました。一方で、前述の通り、土壌汚染の発見は難しいことから、今後も土壌汚染の新規件数は一定程度見込まれます。
また、環境を連続的に捉えることも重要です。環境を大雑把に土壌環境、水環境、大気環境と分類しましたが、あくまでもこれらは便宜上大別した環境区分です。土壌環境と水環境、大気環境の境目は極めて曖昧であり、異なる環境間で常に物質交換が起こっているといえるでしょう。つまり、土壌汚染は水質汚染、大気汚染につながるということです。
今後も注意深く、土壌汚染問題の動向をチェックすることが求められます。以上、りけいのりがお届けしました。