本日も、りけいのりがお届けします。というより、今日に限っては、"ぶんけいのぶ"がお届けします。言葉の使われ方に焦点を当てるので、本日はいつもの記事とは一味違います。
デジタルトランスフォーメーションの風潮
近年、身の回りでの急速なIT化が進み、多くの事柄がアナログからデジタルに置き換えられています。ペーパレス化、キャッシュレス化等の省資源化という意味では、資源利用の観点から良い風潮であると言えます。日本において、以上のようなDX(Digital Transformation: デジタルトランスフォーメーション)の推進は、デジタル庁の創設により加速することが予想されます。環境保全などの観点を度外視しても、新型コロナウイルス感染拡大が後押しし、テレワークやキャッシュレス化は否応無く浸透しました。
まさに、変化の時代です。
2020年現在から振り返り、過去10年で大きな出来事は何が挙げられるでしょうか。こと電子デバイスにおいては、スマートフォンの流通、浸透が考えられます。Appleやサムスンなどが参画し、スマートデバイス業界での競争は激化の一途を辿っています。現在、各社の企業努力のおかげで、我々消費者は、安価で高品質なスマートフォンを手に入れることが出来ます。
内閣府の実施した"令和元年度青少年のインターネット利用環境実態調査"によると、スマートデバイスの所有率は次のように報告されています。
令和元年度 内閣府調査
- 小学生 (n=1081)
スマートフォン(49.8%)、携帯電話(12.3%)、パソコン(19.1%)、タブレット(41.0%)
- 中学生 (n=1241)
スマートフォン(75.2%)、携帯電話(4.5%)、パソコン(21.0%)、タブレット(35.9%)
- 高校生 (n=868)
スマートフォン(97.1%)、携帯電話(1.6%)、パソコン(27.1%)、タブレット(24.0%)
参考: *1
若年層のデジタルネイティブ化は進み、今や高校生の97%はスマートフォンを保有しています。これは、時代の流れがそうさせたのであり、良いも悪いもありません。使用するユーザー一人ひとりに、その使い方は任されており、どう使うも自由なのです。
本記事の目的
前置きが長くなりましたが、本題に移ります。現代、スマートフォンのようなデバイスの普及に伴い、年齢を問わず多くの人が、多くの人と関わり会い、多くの情報にさらされています。コミュニケーションの大部分も、スマートフォンが仲立ちするようになりました。
表情やジェスチャーを介さないテキストベースのコミュニケーションは、 過去数十万年のホモサピエンス史を振り返っても、異常であると言えます。ここで、ダンバー数の導入を行います。
ダンバー数 Dunbar's number
霊長類が親密なグループを築くには、大脳皮質の大きさに関係し、人間が円滑に安定して維持できる関係は150人程度だという理論。
引用: *2
つまり、社会心理学的に考えると、人間が社会生活を営む上で、安定的な関係の構築が可能な人数は150人程度であるということです。一方、メールやSNSにより、関係の構築が可能な人数は爆発的に増加しました。人間関係という一側面においても、人間の脳は過度な情報にさらされていると言えます。
しかし、デジタルネイティブにとってはこの環境こそが普通であり、違和感を感じることはありません。
本記事では、若年層における読解力スコアを皮切りに、DXに潜む弊害について認知することを目的としました。
PISAのデータを概観する
はじめに、数字から現状の把握を行います。国立教育政策研究所の公開している、"OECD生徒の学習到達度調査2018年調査(PISA 2018)のポイント"を典拠として、若年層(15歳)の各種能力を確認してみましょう。
文部科学省・国立教育政策研究所:令和元年12月3日:OECD生徒の学習到達度調査2018年調査(PISA2018)のポイント: 15歳
(順位: OECDに加盟している37か国中)
- 科学的リテラシー
- 2006: 3位
- 2009: 2位
- 2012: 1位
- 2015: 1位
- 2018: 2位
- 数学的リテラシー
- 2006: 6位
- 2009: 4位
- 2012: 2位
- 2015: 1位
- 2018: 1位
- 読解力
- 2006: 12位 (498点)
- 2009: 5位 (520点)
- 2012: 1位 (538点)
- 2015: 6位 (516点)
- 2018: 11位 (504点)
参考: *3
データを見ると分かりますが、科学的リテラシーや数学的リテラシーは、国際的な位置づけとしては高水準を推移しています。この結果を素直に受け止めると共に、教育水準のさらなる向上を目指すことが、重要となります。
一方、注目したいのは読解力 (点数も併記しました)。データの見方にもよりますが、2012年より日本人・若年層の読解力は加工の一途を辿っています。このように、読解力が相対的(順位基準)、絶対的(ポイント基準)に低下している原因は、複数予想されます。
- 日本語という言語の構造が複雑であり、多言語と比較して習熟が難しい。よって日本語に対する読解力が、国際的な枠組みの中では相対的に低下している。
- 2012年以降、若年層の読解力を下げるようなファクターが発生した。よって、若年層の読解力が顕著に低下した。
ここで、読解力の低下の"1つのファクター"として、スマートフォンの普及に伴うSNSベースのコミュニケーションが考えられるのです。
ヤバい、辛い、神、語彙力
若者言葉として、近年様々な単語が誕生しています。これは、日本語の柔軟性を象徴する現象といえるでしょう。例えばこんな感じです。
- ヤバい、これは熱い。
- マジ今日のバイト多くて辛い。
- あそこのタピオカマジで神。
- ○○って、機嫌悪いときが多いけど、ふとした時に優しくなるの、ギャップがほんといいよね、伝われ (語彙力
以上のような例がぱっと浮かんできたりけいのりは、15歳なのでしょうか。特に最近(個人的に)耳にするのは、"語彙力"です。"語彙力"の若者言葉的な意味はこんな感じです。
語彙力
自分の語彙力の無さを引き合いに出し、相手の読解力に身を任せることで、意思疎通を図る際に使う。
このように、自分の伝えたいことを、もはや相手の解釈に一任するという斬新な発想です。SNSベースのコミュニケーションにおいては、以上のような言葉が一役買っています。あえて表現を漠然とさせることで、多くの解釈が可能となり、表面的なコミュニケーションが成立するのです。
ここで、疑問を投げかけて筆をおきます。
あなたのその言葉、本当に相手は理解していますか?
あなたのその気持ち、本当に相手に伝わっていますか?
言葉は使い方によって、相互理解、相互対立の原因となります。無意味な人間間の衝突が減り、お互いをより深く理解できる社会を願って...
りけいのりがお届けしました。