本日も、りけいのりがお届けします。
突然ですが、皆さんは実験をしたことがありますか?
- 中学生の頃、理科の実験をした。
- 高校生の頃、科学部に所属していた。
- 大学生の頃、卒業研究で実験をした。
- 現在研究者で、実験とは切っても切れない運命を辿っている。
- 実験をした覚えがない。
この記事を読んでいる方によって、背景は様々です。実験の定義について辞書で確認をしてみると、こうあります。
Experiment:
a test, trial, or tentative procedure; an act or operation for the purpose of discovering something unknown or of testing a principle, supposition, etc.:
Ref.: *1
翻訳すると、"未知の何かを発見・既知の事実や仮説を検証することを目的とした行為"とあります。まさに辞書的で隙がありませんね。
ここで、りけいのりなりに、実験の定義をします。
実験: 文明が推進する上で重要となる、新規事実の発見や仮説検証に伴う行動の最小単位。
いやいや、もっとまわりくどいやん。まぁそう思いなさんな。"文明の推進"ということが大切なのです。
理学的な知見の探求にしろ、社会問題解決のための工学的な挑戦にしろ、それは文明の推進に直結する行為です。我々がこの世界を良く知り、また住み良くすることは、幸せに繋がります。
持論の展開はこの程度にして、我々の文明は、今も世界のどこかで誰かが行っている実験を基に、推進しているのです。新型コロナウイルス感染拡大の状況を受けて、感染症研究所や情報学研究所、大学の研究者が実験している姿が想像しやすいと思います。
そんな人類にとって大切な行為、実験の正当性はどのように担保されるのか。ここに、今回のテーマがつながります。すなわち、"実験ノート"についてです。
実験ノートの意義
実験ノートの意義、とは言ってもその効用は計り知れません。列挙すると、"研究者としての行動記録・研究の裏付け"、"コミュニケーションツール"、"洞察の源"が挙げられます。順を追って確認していきましょう。
研究者としての行動記録・研究の裏付け
この項目が、実験ノートの価値を端的に表現する、重要な理由です。実験ノートには、必ずページ数、日付、記入者の名前を書く欄が存在します。つまり、誰が、いつ、何をしたかが端的に詰め込まれた記録だと言えます。さらに、研究の内容を確認する担当教員や共同研究者がいれば、ダブルチェックが為されます。
研究者としての足跡を、説得力を持って記述する媒体が、実験ノートなのです。
あなたの発見や研究成果はあなたのものです。ですから、情報の保護をしたいところ。
ある時点で実験を行い、大発見のきっかけとなるデータを、あなた自身が獲得したことの、何よりの証拠となるのです。反対に、いくら言葉で"私が発見者です!!"と主張したって、実験ノートという根拠がなければただの妄言になってしまうのです。
数年前に、"STAP細胞にまつわる事件"で話題となった小保方さんの実験ノートは、内容が不適切であり、また3年分の実験ノートは2冊程度ということで、研究者としての烙印を押されました*2。
行動記録は、科学において重要視される"再現性(Reproducibility)"を検証する上でも重要となります。どのような人間がその実験ノートを見ても、実験者と同様の操作が可能であることが重要となるのです。
よって、
- 実験日時
- 実験時の気温、湿度、気圧
- 実験の具体的な操作
など、出来るだけ具体的に、事細かに記載する癖をつけましょう。あなたの目の前で起きている現象を、もう一度再現できるか、ということを自分に問うことが大切です。
コミュニケーションツール
研究を共同で進める研究者、研究室の担当教員がいる場合、実験ノートは非常に有力なコミュニケーションツールとなります。通常、共同研究者や担当教員が、あなたの研究・実験につきっきりになってくれることはありません。あなた一人で行う作業が実験であり、その現象を目の当たりにするのはあなた一人です。
そこで、
- 研究の進捗を報告する際
- 研究に関してアドバイスを求める際
には、実験ノートに書かれた数字が現象を浮き彫りにし、文章が発見を語ります。言語化されることで、他人と自分との間で情報の共有が可能となり、新しい視点の共有や、実験に対するアドバイスを貰えるのです。
学会においても、実験ノートは有用です。りけいのりも、学会の際には実験ノートと、資料を携帯していました。実験ノートが、コミュニケーションの起点になるのです。
洞察の源
最後に紹介する効用。それはズバリ、数カ月経ってから実験ノートを眺めると、思いもよらない発見があるからです。
- 当時の自分には無かった視点でデータを眺めることで、新たな発見がある
- 冷静になって実験系を眺めたときに、改善の余地がある
- 時には、仮説検証に必要な情報が欠落していることを発見する
- はたまた、昔のデータから新しい仮説が生じる
実験ノートという物理的な媒体に実験の詳細を書き記すことは、手軽に過去を振り返り、データを反芻する機会を与えてくれます。デジタルデータとして実験の内容を記録することも1つの手ではありますが、コミュニケーションツールや洞察の機会を生み出すツールとして実験ノートを捉えると、やはり紙に書くのが良いように思います(りけいのりの意見です)。
おわりに
いかがでしたか? 普段何気なく書いている実験ノートには、様々な秘めたる力があるのです。そんな彼ら/彼女らを、これからは少し大切に思い、丁寧に書いて頂ければ嬉しいです。
こちらに、おすすめの実験ノートを掲載しておきます。皆さんのおすすめ実験ノートがありましたら、ぜひ教えて下さいね。
本記事を通して、実験ノートを書くことの重要性が伝わっていれば幸いです。次回は、実験ノートの書き方について、具体的にお話します。以上、 1年で約3冊の実験ノートを消費する、りけいのりがお届けしました。
楽しい、理系ライフをお過ごしください!
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