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【化学結合論】わかる、分子軌道法。【HMO②】

本日も、りけいのりからお届けします。

 

今回の記事では、前回に引き続き、化学系の学生を唸らせる分野、分子軌道法について分かりやすく解説します。前回の記事と併せて読むことで、理解度がぐっと深まります

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本記事では、分子軌道法の理解の要となる量子力学の導入を行います。詳しい説明や、量子力学の基礎方程式となる、Schrödinger方程式の導出などは他の文献に譲るとして、

について共有できればと思います。

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量子力学の世界にご案内

それでは、量子力学の世界に、早速足を踏み入れてみましょう。皆さんの体を、約100億分の1に縮めた世界が、量子力学の世界です。ナノスケールの世界です。

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大きさと物理学

20世紀初頭、計測技術の発展に伴い、今まで見えなかった世界の現象が明るみに出ました。非常に小さな世界の話です。

 

小さいだけなら良いのですが、我々の住んでる世界とは異なる物理法則が成り立っていることが判明します。これこそが量子力学であり、まだ産声を上げてから100年程度の学問です。当時の物理学者にとっては驚きですね。すべての物体の運動は古典力学 (Newton力学)により成り立っていると考えていたので、それはそれは、もう大騒ぎです。

 

物理学はサイエンスであり、力学は実験科学です。つまり、以下の過程を経ることで、前進する科学です

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"【科学一般】りけいのたちつてと。"の再掲。

実験データ (経験的事実) を収集し、

  • それを適切に再現するモデル
  • そのモデルを裏付ける論理

があって、物事の理解が深まります。

 

スケールの小さい世界に突入したら、その経験的事実が成り立たなくなった、というだけの話です。相対性理論の発展の際もそうでした。学問は、新たな事実が浮上することで、既存の事実が相対化され、全体としての理解が深まるのです

 

ここでは、量子力学の基礎式、シュレディンガー方程式について解説することはしません。微分方程式と呼ばれる数学的素養が必要となるため、いずれ応用数学にて扱います。

 

量子力学で見られる、古典力学とは異なるポイントを3つまとめます。

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量子力学の特徴

まずは、不確実性についてです。

こちらは、名前がめちゃめちゃかっこいいので、聞いたことのある方がいるかもしれません。ハイゼンベルグの不確定性関係です。図中で示したのは、位置運動量の不確定性について1)

  • 位置の変位: Δx
  • 運動量の変位: Δp

とします。変位を0とすると、位置あるいは運動量が定まる、ということに対応します。ここで、例えば、Δxを0にすると、Δpはどうなるでしょうか。不確定性関係より、両者の積はある有限の正の値より大きくなる必要があります。よって、Δpは発散し、運動量が定まらないことになります。逆もまたしかりです。

 

とりあえず、位置と運動量を同時に確定することができない、と考えてください。

 

量子力学で取り扱う物体、量子には 電子(電流のもと) 光子(光のもと)が含まれていて、実際に量子の位置を確定することはできません。確率的にしか、量子の存在を定めることができないのです。これは、実験的な事実です。

 

続いて、離散性についてです。

量子の示す状態は、離散的です。具体的には、取りうる値が決まっているということです

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量子の離散性について

上図のように、量子はあるエネルギーしかとることができません。これは、化学において非常に重要です実は、物質の色も、ここから決まってきたりします

 

量子の状態は、量子数と呼ばれる値により規定されます。代表的なものは、主量子数であり、量子のエネルギーを決定します。

 

最後に、零点エネルギーの存在についてです。

零点エネルギーの存在は、すなわちエネルギーが0をとらないことを示しています。こちらも、古典力学にはない特徴です。これは、不確定性や離散性とも対応の取れた性質です。

  • 有限の領域内に量子を閉じ込めると、その運動量は不確定なものになり、厳密に0と定めることができなくなります1)
  • 量子のエネルギーは主量子数により規定されるが、取りうる値は1以上の自然数であり、0は含まれません。定義式から、主量子数n=1の時、エネルギーは有限の値を示します。

以上が、量子力学の特徴の概観でした。

化学反応は量子力学の範疇にある

前節では、

  • 量子には電子が含まれること
  • 量子の挙動は量子力学により規定されること

を学びました。

 

ここで、化学結合は電子を仲立ちとして起こる、という前回の記事を思い出してください。前回の記事では、電子の振る舞いを古典力学的に扱いました。でも、電子の振る舞いをより正確に理解するには、量子力学が不可欠となります

おわりに

いかがでしたか? 

 

原子や分子を扱い、現実世界で起こることと結びつける化学は、古典物理学量子力学の懸け橋といえるでしょう。次回は実際にシュレディンガー方程式を扱い、近似的な方法で化学結合を論じます

 

以上、りけいのりがお届けしました。

参考文献

1) P. Atkins, J. de Paula, D. Smith (2013) Elements of Physical Chemistry 6th Edition, 訳書 アトキンス 物理化学要論 (第6版), 訳) 千葉秀昭, 稲葉章, 株式会社東京化学同人, 12. 量子論