本日も、りけいのりからお届けします。
突然ですが、皆さんは今取り組んでいる、仕事、課題、勉強をどのように捉えていますか? 難しいですか? それとも簡単ですか?
例えば、今皆さんが行う仕事を考えてみて下さい。(学生の方は勉強と置き換えて下さい)
- "問題のどこから手を付ければ良いかすら分からない"→質的に難しい
- "問題の量が多すぎて、とても頭が回らない"→量的に難しい
- "特に調査を必要としなくとも、完了できる仕事である"→質的に簡単
- "集中して取り組めば、定時の3時間前には終わる"→量的に簡単
以上のように、難易度は質的あるいは量的なものに分類ができます。
"りけいのり"の個人的な体験ですが、研究活動を行う際に、時間当たりのタスク量が多くなるほど、だんだんと休息が不十分になり、それに伴って目の前の課題に取り組む
- モチベーション
- 明晰な思考力
- 柔軟な発想力
が失われるのを感じます。
以上、今の自分にとっては非常に難しい課題に取り組む状態を、過度なストレス下におかれた状態と定義しましょう。反対に今の自分にとっては簡単すぎる課題に取り組む状態を、ストレスの足りない状況におかれた状態としましょう。
勘の鋭い方は、もうお気づきだと思いますが、あなたには、"あなたの能力を最大限に引き出す"、"適切なストレス"というものが存在します。特に、そのことを示した法則を、"ヤーキーズ・ドットソンの法則"といいます。
今回は、自分の持つ能力を最大限引き出したい、そんなあなたのための記事です。
ヤーキーズ・ドットソンの法則とは
ヤーキーズ・ドットソンの法則の法則は、心理学者のR.M Yerkes (ヤーキーズ)とD.D Dodson(ドットソン)のマウスに対する実験から導かれた法則です*1。
以下、ヤーキーズ・ドットソンの法則の定義です。
This law states that a relationship between arousal and behavioral task performance exists, such that there is an optimal level of arousal for an optimal performance. Over- or under-arousal reduces task performance.
引用: *2
以下、りけいのりによる日本語翻訳です。
ヤーキーズ・ドットソンの法則は、覚醒・興奮と発揮されるパフォーマンスの関係を示した法則である。最適なパフォーマンスを引き起こす覚醒度合いが存在し、それ以上あるいはそれ以下の覚醒度合いはパフォーマンスの低下を招く。
ここで出てきた覚醒・興奮とは、ストレス(外部刺激)によってもたらされる内部応答であり、よって次のようなパフォーマンスの曲線を得ることができます。
では、なぜこのような上に凸の曲線が得られるのでしょうか。それは、脳におけるストレス応答とホルモン分泌が関係しています。
適切なストレス→ワーキングメモリの活性化
(ワーキングメモリ: 前頭前野の情報を一時的に保存、処理する部位)
過度なストレス→コルチゾール等のホルモン分泌
参考:*3
以上に示したのは、ストレス応答のほんの一例です。我々のカラダは、もともとは生存および生殖をするべく、自然淘汰を受けてきた歴史の産物です。そこで、外部からの脅威を解消・回避するために、ストレスを感じるようになりました。ストレスを受けた上で、"逃走・闘争反応"の判断が下されます。
生物学的な理由により生じたストレス。このストレスを理解し、上手に利用することがあなたのパフォーマンスを最大限に引き出すカギとなります。
おわりに
それでは、あなたにとっての"最適なストレス"はどの程度なのでしょうか。これが一番の関心事です。当然、あなたとあなたの隣の人のカラダは違っていますし、ストレスに対する認識、応答も大きく異なります。つまり、"最適なストレス"を決定する変数はあまりにも大きく、一般的な答えが得られないのが現状です。
よって、あなた自身の"行動記録"を付けることをお勧めします。オーダーメイドのストレス日記といったところでしょうか。あなた自身の睡眠時間、食事回数、タスクの数、難易度などのデータを集めることから始めるのです。
以上のように、行動という客観的な指標とパフォーマンスを結び付けることが、あなたを今まで以上に知ることに繋がります。
以上、りけいのりがお届けしました。
参考文献
*1:並木博, 安藤寿康 (1991), Yerkes-dodson law revisited : the implication of the age-old law in the light of a cognitive theorizing, 哲學, 92, 237-256.
*2:
Cohen R.A. (2011) Yerkes–Dodson Law. In: Kreutzer J.S., DeLuca J., Caplan B. (eds) Encyclopedia of Clinical Neuropsychology. Springer, New York, NY.
*3:
松田美登子 (2015), 学生相談室だより No.35, ストレスと上手につき合おう! -その1 ストレスはパフォーマンスを高める?-, 東京富士大学/ 東京富士大学大学院.
http://www.fuji.ac.jp/wordpress/wp-content/uploads/2015/09/no35.pdf