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【心理学】認知的不協和と禁煙について

本日も、りけいのりからお届けします。

 

突然ですが皆さん、今までに、次のようなことに挑戦したことはありますか?

  • 筋トレ
  • ダイエット
  • 喫煙

無い方に関しては、何かに挑戦したときのことを思い出してみて下さい。それらを継続する際に、よくイメージされるのが、頭の中の"天使"と"悪魔"。

 

筋トレを例にとると、天使は、"今日も筋トレ、頑張ろうね! 1っカ月後には理想のカラダを手に入れているよ!!"と言っています。一方、悪魔は、"一日くらい休んじゃえよ。ポテチ食って寝ようぜ"と言ってきます。どうしたことでしょう。我々の頭には、2つの人格が備わっているのでしょうか。

 

今回は、先ほど登場した"悪魔"を説明する理論、"認知的不協和理論"についてお話します。

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認知的不協和とは何か。

認知的不協和は、社会心理学者であるレオン・フェスティンガーメリル・カールスミスが実験的に発見した、心因性のバイアスです。

 

彼らは、以下のような実験を行いました。

単調な作業を大学生に依頼する。

評価は、面白い(+5)から退屈(-5)までの11段階評価。

設けた比較群は以下の通り。

  1. 報酬を与えない群
  2. 1$の報酬を与えた群
  3. 20$の報酬を与えた群

実験以前には、次のような文言が伝えられている

  1. 「課題を面白いと思うことが重要」
  2. 次の被験者に、「面白かった」と伝える

結果は、次のようになった。

  1. 報酬を与えない群→-0.45 point
  2. 1$の報酬を与えた群 → -0.05 point
  3. 20$の報酬を与えた群 → +1.35 point

参考: *1

 非常に興味深い結果です。お金をもらわずに作業をした大学生(対照群)は、-0.45 ptと、退屈であるということを訴えています。よって、この作業は、大学生にとって確かに退屈であるということが示されました

 

続いて、対照群と報酬を与えられた群の比較です。ここでは、報酬を与えられることによって、ポイントは+に上昇していることが分かります。よって、報酬が与えられることで、単純作業でも楽しいと思うようになるのです

 

最後に、1$と20$の報酬を与えられた群の間での比較ですが、報酬が少ない方がむしろ単純作業を楽しいと思う結果が得られました。この現象の裏に、"認知的不協和"が隠れています。

  • 20$の報酬を貰った群の心理
  1. 20$という報酬は高額である。
  2. 一方、この単純作業は退屈でつまらない。
  3. つまり、退屈でつまらないこの作業を行う対価として、20$は妥当な報酬である。
  • 1$の報酬を貰った群の心理
  1. 1$という報酬は少ない。
  2. また、この単純作業は退屈でつまらない。
  3. つまり、この作業を行うことにより得られる報酬が1$であることは、不当である。
  4. 一方で、楽しものであると次の被験者にも言った。
  5. よって、この作業は実際は楽しかった。

 以上のように、報酬の額によって、全く異なる心理が働きます。心理的な補完機能と言っても良いかもしれません。

 

ここでおさらいすると、"認知的不協和"とは、次のようなことを指します。

認知的不協和:心と行動に齟齬が生じた状態

認知的不協和理論:認知的不協和を解消する方向に心理的バイアスが加わること

参考: *2

 続いて、認知的不協和の例題を確認してみます。

こんなところに認知的不協和

禁煙

まずは、禁煙について考えてみます。 大前提として、"喫煙は身体に有害であり、辞めるべきである"という認識が喫煙者にあるものとします。発がん物質を体内の粘膜に直接曝露しているのですから、これは科学的にも健康を害すると言って良いでしょう。

 

以上のようなモチベーションがあったとしても、やはり意思を貫くのは難しいこと。禁煙を開始するや否や、煙草を吸いたいという欲求に襲われます。本記事の全文で紹介した悪魔の登場です。

  • 悪魔①:ここで禁煙したところで、今までさんざん吸ってきているんだから、何も変わらないよ。吸っちゃえ!!
  • 悪魔②:ここで喫煙しても大丈夫!! その分運動をして、心肺機能の回復ができれば、それで帳尻が合うよ。吸っちゃえ!!
  • 悪魔③:煙草をやめることによって、今までの友人と行ってた喫煙所でのコミュニケーション機会が無くなっちゃう。友達付き合いが悪いと思われたら、これは良くないことですね。吸っちゃえ!!
  • なお、悪魔④、⑤、⑥、⑦が現場待機しています。

時間が経てば経つほど、喫煙行為を正当化する悪魔が増加して、いつの間にかモチベーションがそがれてしまいます。

筋トレ・ダイエット

続いて、"筋トレ・ダイエット"について考えてみます。大前提として、"適度な運動を習慣的に行い、体形を維持するのは健康上重要である"とします。食事制限や、運動を継続していると、こんな悪魔の声が聞こえてきます。

  • 悪魔①:今日は金曜日!! 一週間、お疲れ様、自分。今日くらいは休んでも良いよね。寝よう!!
  • 悪魔②:おなか減ったな~。あ、目の前にハンバーガーショップあるじゃん!! 一回くらい食べても、体重なんて、そんあ変わらないよ。食べよう!!
  • 悪魔③:あんまり禁欲的な生活を送っていると、精神的におかしくなっちゃうよ?? 少し休んだら??
  • なお、悪魔④、⑤、⑥、⑦が現場待機しています。

と、このようにあらゆる角度から悪魔が登場しては、あなたのやる気を盗んでいきます。 

おわりに

以上の例で問題なのは、認知的不協和によって自分が本来目指していた目標から遠ざかってしまうこと。そして、多くの人は"認知的不協和"という心理学的な補完効果の存在すら知らないということです。

 

何かに継続的に取り組む際、"認知的不協和"は避けて通れない課題です。ヒトには、不協和を回避し一貫性を求める性向があるのです。まずは、認知的不協和を認識し、何かに取り組む際に、悪魔を客観的に捉えることが重要になります。

 

以上、りけいのりがお届けしました。

参考文献 

*1:

齊藤勇 (2017)、図説心理学入門[第2版] 第22刷, 株式会社誠信書房, トピックス6-6 金で態度を変えられるか

 

*2:

青木紀久代, 神宮英夫, カラー版徹底図解 心理学, 新星出版社, 合理化と認知的不協和.