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【銀杏の科学】葉っぱは何故扇形? 臭いのは何故? ギンナンの食べ過ぎは良くない?

本日もりけいのりからお届けします。

 

秋になると、少し肌寒い気温となり、葉は色づきます。

四季のある日本に生まれて良かったと感じますね。

 

今回は、そんな秋の味覚、視覚において存在感のある、銀杏の科学を扱います。

 

並木道に悠然とそびえるイチョウ (銀杏) の木は、まさに圧巻です。そして、彼らの落とし物こそが、ギンナン (銀杏) です。イチョウギンナンの漢字は何故同じなのか、ということにも踏み込めればと思います。

 

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銀杏、言葉の由来

まずは、"銀杏"という言葉の由来から。よくよく考えると、"イチョウ"、"ギンナン"と2つの読み方がある銀杏。ダブルミーニングなのは、次のように2つの由来があるからだそうです。

ギンナン:アンズの実を小さくした見た目で、銀のように真っ白な実であることから

イチョウ:中国ではイチョウを鴨脚(ヤーチャオ)と呼び、その読みが日本に輸入された

(Concept Green, 2015 *1

 ちなみに、イチョウは非常に長寿な樹木であることで知られています。2020年の研究では、次のようなメカニズムが明らかとなっています。

銀杏の老木はリグニンなどの物質を持続的に合成し、幹の密度と強度を上げることで、太くなり続ける樹体を支えている。同時に大量のR遺伝子の持続的な発現及び特殊な保護機能を持つ代謝物の蓄積により耐性を強め、各種生物と生物以外の脅威に対抗することで、寿命を大幅に延長している。(引用: *2 )

まとめると、

  • リグニン→強度の増大
  • 保護機能のある代謝産物の蓄積→ 対外生物への対策

という2つの戦略により、イチョウは長寿であるということになります。続いては、イチョウの葉の謎に迫ります。

イチョウの葉の謎

イチョウの葉、といえば誰もが次のような特徴的な葉を思い浮かべるのではないでしょうか。

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イチョウの葉っぱの概観

やっぱり、何といっても"扇形"が特徴ですよね。普通の葉っぱは楕円形であるのと比較すると、イチョウでは何が特別なのでしょうか。それには、成長点の位置が関係しているようです。成長点の位置が葉の先端にあるため、扇形に葉の形が広がっていくそうです*3

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イチョウの葉っぱ、成長のイメージ

また、観察眼の鋭い方は、木や葉によって、その切れ込みの程度が違うことに気づくのではないかと思います。イチョウの葉っぱには、次のように切れ込みの浅いものから深いものまで、多種多様な葉っぱが存在します。

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イチョウの葉っぱの切れ込みについて

以上のような形については、未だ分かっていないことも多いそうです。俗説としては、雌雄によって葉の形が異なるというもの。これは迷信だそうですね。雌雄で葉の形が異なるという印象を与えるのは、代謝に必要なエネルギーが異なるからだそう。なんでも、次のようなことが知られています。

  • 雌の葉は雄の葉より大きい→実をつけるためにエネルギーを要する
  • 6月以降に展開した葉の切れ込みは、それ以前のものと比較して増加
  • 葉の切れ込みは、扇形の葉に特有な空気抵抗を軽減するため

参考: *4

また、イチョウの進化に関する事実も知られています。

参考: *5

と、このように、時代をまたにかけたストーリーが、身近な植物に隠されていたのです。

銀杏は何故臭いのか、食べ過ぎは良くない?

まず、ギンナンを観察したり、採取する際には注意が必要です。ギンナンの外種皮には、ギンクゴリン酸と呼ばれるかぶれ成分が含まれています*6

 

独特な臭いは、酪酸とエナント酸という、比較的単純な酸によるものだそうです*7

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酪酸とエナント酸

※Structures were referred from *8 and *9.

 

ギンナンには、ビタミンB6類縁体の4-メトキシピリドキシン(4-MPN)が含まれます。これには次のような毒性が知られています。

4-MPNはビタミンB6と構造がよく似ているため、ビタミンB6が結合して働く場所へ誤って結合してしまいます。そのため、ビタミンB6が本来の仕事をすることができず、中毒症状が起こるのです。4-MPNは乾燥ぎんなん1gに約100mcg含まれています。主な中毒症状は嘔吐と痙攣で、ぎんなんを食べてから1~12時間後に発症し、90時間以内(半数は24時間以内)に回復します。一部引用: *10

おいしいからといって、食べ過ぎにはご注意ください!!

おわりに

今回は、

  • 銀杏という名前の由来
  • 葉っぱの成長原理から歴史
  • ギンナンを構成する化学物質

について扱いました。秋の味覚であるギンナン。そこには、恐竜の時代から続くドラマが隠されています。次、あの匂いを嗅いだら、是非一度この記事の内容を思い出してみて下さい!!

 

以上、りけいのりがお届けしました。

参考文献

*1:

 コンセプトグリーン、銀杏(いちょう)と銀杏(ぎんなん)(2015)、

conceptgreen.jp

*2:

Science Portal China、中国の科学者が銀杏の長寿の秘密を解明、

spc.jst.go.jp

*3:

志水正敏、科学未来館 科学コミュニケーターブログ、イチョウの葉っぱはなぜ扇形?、

blog.miraikan.jst.go.jp

*4:

ウェザーニュース、できた時期で形が変わる?イチョウの葉の不思議、Accessed: 2020/10/.

weathernews.jp

 

*5:

全国こども電話相談室、Q. なんでイチョウの葉っぱには、切れ目がある葉と切れ目のない葉があるのですか?、

www.tbs.co.jp

*6:

船山信次 (2013), 史上最強カラー図解 毒の科学 毒と人間のかかわり 第2刷, 株式会社ナツメ社, 第4章 毒をもつ動物や植物、毒の小辞典. 

史上最強カラー図解 毒の科学 毒と人間のかかわり

史上最強カラー図解 毒の科学 毒と人間のかかわり

  • 作者:船山 信次
  • 発売日: 2013/04/11
  • メディア: 単行本
 

*7:

Chem-Station、秋の味覚「ぎんなん」に含まれる化合物、Accessed:

www.chem-station.com

*8:Butyric acid | C4H8O2 - PubChem

*9:Heptanoic acid | C7H14O2 - PubChem

*10:

 GetNaviWeb, ぎんなんの食べ過ぎはキケン!何個までなら大丈夫?(2016), 平井千里.

getnavi.jp