本日も、りけいのりがお届けします。
皆さん、今年のハロウィーンはどのように過ごしますか?
例年ならば、
- 渋谷で楽しい夜を過ごした当事者
- テレビ越しでテレビを見ていた人
- 興味なさすぎていつも通り過ごした人
と、人によって過ごし方は違っていたかもしれません。今年は、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、少なくとも"渋谷でわいわい"みたいな人はいないのではないでしょうか。代わりに、VRにて渋谷の街が再現されているなど、テクノロジーの存在感は大きいですね。
今回は、若者 (りけいのりもそこに含まれることを信じて)の多くが何故、"みんな揃って大騒ぎするのか"について考察します。
ハロウィーンの起源
ここでは、ハロウィーンの由来について簡単に話します。
ハロウィーンの起源は非常に古く、キリスト教以前のドルイド教はサムヘイン祭だそうです1)。もともとはケルト人の死の神に対するお祭りで、現世と死後の世界が繋がり、霊魂がそこを行き来するというものでした。
ちなみに、我々がイメージするカボチャは、文化がアメリカに伝播してから誕生したそうです1)。
つまり、現代の渋谷で行われているものとは内容を全く異としており、厳粛なお祭りでした。りけいのりの母、"りけいマミー"に聞いた話ですが、昔米軍基地で行われていたハロウィーンは、今よりも静かで荘厳だったそうです。
よって、今の我々が知っているハロウィーンは、日本で独自の変質を遂げた文化であるといえるでしょう。ここには、日本の文化的背景が関係していると考えられます。
日本文化とハロウィーンの融合
ここで少々話を変えて、日本の文化についてもざっくりと触れておきます。昔、稲作の技術が伝わってから、日本人は農耕民族としての歩みを進めてきました。現代でこそパン食が一般的ですが、"日本の主食は米"という時代がだいぶ長く続いていました。
"日本の米は世界一"という歌があるほどに、日本人になじみ深いお米2)。
ここではお米の宣伝をしたかったわけではなくて、日本と農耕には、切っても切り離せない深い関係があったのです。農業は、"狩猟民族のような個人戦、少数部隊では達成できない仕事"です。よって、仲間との協調が不可欠でした。
ここに、現代日本に通じる文化の根底の発端があるように思います。
村としてのまとまりが非常に重要となり、村というコミュニティーを尊重することで農業を達成し、結果として自分も生きることが出来たのです。
そこで発生したのが村社会で、集団としての力を、効果的・効率的に発揮していました。その中で決まりをやぶったりすると村八分。日本語には"村"にまつわる熟語が多いのも、集団が重要な意味をもっていた名残ですかね。
話を現代の日本に移します。この集団尊重の考えは、現在でも根強く残っています。
一昔前の言葉ですが、KY(空気読めない)も、集団を乱す人への排他性が現れた言葉ですね。もっと端的に、異質への排他性を表す、"出る杭は打たれる"という言葉があります。
すなわち、現代の日本は、"自分の言いたいことが、大声で言いにくい世の中"なんです。多くの人にとっては、息苦しい世の中なのかもしれません。
言いたいことが言えず、フラストレーションが溜まっていきます。
ここで、一年の行事を上げてみると、
- 節分
- バレンタインデー
- ひな祭り
- 七夕
- 夏祭り
- ハロウィーン
- クリスマス
ここで、各行事について考察すると、日本土着の節分、ひな祭り、七夕、夏祭りについては、既に行事の意味合い・背景が定着しています。続いてバレンタインデーや夏祭り、クリスマスは、大切な人や恋人と楽しむ、といったイメージが強いのではないでしょうか?
残るは今回の議題、ハロウィーン。もともと日本には、ご先祖様や死者を弔うお盆があるので、席が空いていません。つまり、もともと日本におけるハロウィーンの意味合いが薄かったのです。
もう1つ、日本人の価値観として、"ハレとケ"があります。非日常と日常ってことです。
日常も大切ですが、それと同じくらい非日常も大切です。ハレの意味合いが強い、盆踊りなどは、現代人はあまりなじみが無いようです。
ここでハロウィーン、"ハレがあるやん、ハレが!!!"とすかさず席を取りました。
日常とのメリハリ、毎日の欲望からの開放として、日本人は元々文化的意味合いの薄かったハロウィーンに"ハレの意味を与えた"と考察できます。
社会的抑圧のはけ口としての位置づけに、"ハロウィーン"があるのではとりけいのりは考えています。年々勢いを増していたその激しさは、日本の"出る杭は打たれる風潮"、"言いたいことを言いずらい風潮"への、無意識の反抗なのかもしれませんね。
抑圧された欲望の行方
"ハロウィーン≒渋谷"のような認識が浸透しつつあります。なんででしょうね。もともと人の多い渋谷。そこをめがけてさらに人が集中する。なんででしょうか。心理学的視点から考えます。
まず、集団について整理すると、関係のない個々が集まり、個々の持たない性質を持った状態といえます。
"群衆は一時的に1カ所に集まり、何らかの共通行動をとっている人々"
と定義されます3)。
心理学的に、群衆には以下の3つの性質があると言われています3)。
- 同質性(集団に属することで自己の意味合いが薄れ、周囲に行動を合わせる状態)
- 情緒性(興奮状態に陥り感情に流されやすくなる)
- 無責任性(行動に対する責任が集団で薄められることによる無責任さ)
こうみると、ハロウィーンは群衆行動の典型であるといえるでしょう。
以前、ニュースで、30-40代のサラリーマンがインタビューを受けていました。コスプレをした彼が、何故渋谷に来たのか聞かれると、、
「コスプレをすればちょっとでも目立てるかとおもって来た」
と返答。
- 普段も自己主張をしたいのに出来ない
- 出る杭は打たれるから出られない
- みんなが渋谷に来ているから(同質性)、ちょっと羽目を外してもOK(無責任性)
といったことを、この一言は端的に表しています。
おわりに
今回は、日本独自の変質をとげたハロウィーンについて、その文化的背景と心理学の分野から迫ってみました。
たまにはハロウィーンのような日も、メンタルヘルス的には必要かもしれません。しかし、当たり前のことですが"人に迷惑をかけない配慮"が必要ですね。
特に、今年は抑圧された欲望の行き場が無くなっています。何事も無く、11/1を迎えられることを祈ります。
以上、りけいのりがお届けしました。
References
1) 関口英里, エンターテイメントとしての祝福空間 : ハロウィン分析を通して見るアメリカ社会, Doshisha Women's College of Liberal Arts annual reports of studie, 54(1), 123-146.
2) "日本の米は世界一"!!!!!
3) 青木紀久代, 神宮英夫, 徹底図解 心理学, 新星出版社, 群集心理 p62-63.