本日も、りけいのりがお届けします。
記事のテーマは、ズバリYouTube依存について。
今となっては、確固たるメディアとしての地位を確立したYouTube。
若者から高齢者まで、幅広い年齢層の視聴者が利用しています。
現在では、YouTuberという職種すら存在し、一つのサービスが職種の名を冠するというのは、非常に面白い時代です。
今回の記事の対象読者は、
そんな経験のあるあなたに、記事を書きます。
YouTubeの中毒性はどこからやってくる?
ビッグデータに立脚したリコメンド
まずは、YouTubeの仕組みについて理解を深める必要があります。
YouTubeは何故ここまでに勢力を拡大し、そして多くの視聴者を離さないのか。
その答えの一つに、莫大な資本を視聴者の分析に投入していることにあります。
つまり、
あなたがYouTubeを鑑賞しているように、YouTubeもあなたを鑑賞しているのです。
これは大切な事実です。あなたのYouTube上での行動は、さらなる利益を生む種として、YouTubeが根こそぎ分析します。YouTube上でのあなたの行動モデルを、以下に示します。
YouTubeの動画は、大別すると
- 5分未満の動画
- 10分からそれ以上の長い動画
- その他
となります。
ここで、1.の動画では広告が1つ、2.の動画では、ミッドロール広告(動画中盤の広告)と前後の広告となっております。ここで表示される広告は、あなたの今までのWeb上(正確にはGoogle上)での活動が反映されて選択されたり、動画のコンテンツによって変化したりします。
つまり、テレビなどのマスメディアにおける広告と比較して、ターゲティングのアルゴリズムを通した広告であるという点では、付加価値であるといえます
知ってもらいたい人に届けられる広告表示システムってことですね
このような付加価値の高い広告に対して企業はペイするので、YouTubeは儲かりますなのでYouTubeは、もっとYouTubeに滞在してほしくなります。図に示した、滞在時間を出来るだけ増やしたいのです。これは、利潤追求という企業の性格なので、いたって普通の事ですね。
だから、莫大な資本を、アルゴリズムの改良やデータ収集に投入します。そのようにして、金の成る木に水をそそぐのです。
となると、YouTubeは
視聴者の自由時間(可処分時間)をいかに他のサービスから勝ち取るか
を考えるわけです。ここでの戦略としては…
- 通知システムを採用する(注意をそらす)
- 音楽サービスを開始する(YouTube Music)
- 幅広いコンテンツを載せる(動画の内容の幅がとてつもなく広い)
などなど、他にも挙げたらきりがありません。
この様にして、YouTubeの動画ネットワークに迷い込んだら、今度は関連動画という機能の登場です。何もしないと、次の動画が流れてきやがります。
しかも、面白そうです。
それもそのはず、YouTubeの関連動画ピックアップシステムも、やはり視聴者に対して最適化されています。もう趣味嗜好が、相手側にはデータとして蓄積しています。
次の動画も観ます。そして関連動画。観る。…
と後はお察しの通りです。この様にして、YouTubeは視聴者の可処分時間を着々と稼ぎます。
すると、人間は面白いことに、
- 長い時間
- 多くの頻度
で接するものに対して愛着を覚えます。習慣化します。単純接触効果ってやつですね。するとYouTubeのアルゴリズムが最適化される。
受動的なメディアなので、手軽に面白い情報、たくさんの情報を受け取れます。
脳みそにとってはコスパの良い行動なので、強化されます。
まとめると、YouTube依存の一つの側面は、
- 視聴者に合わせたコンテンツ提供と最適化により、利用時間が多くなればなるほど、自分にとって楽しいコンテンツになっていく。習慣化される。
なんともよくできたシステムでしょうか。すごすぎます。
王道のファンビジネス
皆さんは、YouTuberという存在について考えたことがありますか?
- 流行の先端を行く存在、流行をつくる存在。
- 我々のやりこと、やりたかったことを代わりにやってくれる存在。
- YouTubeから得られる広告収入を財源として生活をしている存在。
- モーニングルーティンなど、生活に+αの情報を与えてくれる存在。
人によって、その捉え方は様々だと思います。
ここで、断言できることとしては、YouTubeというプラットフォームにおいて、
生産能力と消費能力を兼ね備えている人間です。
つまり、YouTubeの依存に苦しむあなたも、潜在的YouTuberです。
これって結構大切な事実だと思います。他のプラットフォームおよびメディアと比較をしてみましょう。
- テレビ: 消費者から生産者になるのは非常に難しい。 役割がはっきりとしている。
- 新聞: 生産者からの情報を新聞という媒体(すなわちメディア)が編集し、消費者に伝える。 役割がはっきりとしている。
- アマゾン: 出品の大多数がAmazonかその他の生産者。生産者はウェブ経由という消費者へのリーチ方法を獲得したことで、商圏が拡大した。生産者と消費者のすみわけは未だ明瞭か。
- メルカリ: CtoCサービスの代名詞。消費者が生産者になり、生産者が消費者になるという互換性が、モノの流動性の最適化を促した。ここで交換される情報は、あくまでもモノ中心であり、人が有名になることは滅多にない。
それではYouTubeはどうか?
- 今や、スマホ1つでYouTuberになることが出来、また有名人になる可能性が生まれるメディア。
これって既存のサービスと比較しても異端だと思ってます。実際に、このYouTubeの特徴は時代にフィットし、日増しに存在感が大きくなっています。
例えばスウェーデンのYouTuberである、“PewDiePie”をご存知でしょうか。
以下のチャンネルです。
現在のチャンネル登録者は1億人を突破しております。
もうここまで行くと国です。
1人の人間が、
国と同等の人口にリーチするメディアを有する時代
それが21世紀です。ITの産物といえるでしょう。
それは社会的影響も大きくなるわけです。
それでは、なぜYouTuberという存在がこれだけの人々の信頼、そして可処分時間を勝ち取り続けているのか、ということについて考えてみましょう。
キーワードは、疑似社会関係、です。
一般人との疑似社会関係
疑似社会関係とは、次のように説明されます。
我々がキャラクターやセレブと接する内に形成される、一方的な結びつき1)
つまり、直接の知り合いではなくても、親近感を覚えるという関係性です。YouTubeは、この疑似社会関係が発生しやすい構造であると考えます。
つまり…
- 自分もYouTuberになれるという状況がある(生産者と消費者の曖昧性)。
- YouTubeのコンテンツを利用している(ステークスホルダー, 帰属感)。
- YouTuberになっている人は、絵に描いたようなスターというよりは、むしろ自分のようは平々凡々な人間であることが多い(親近性)。
- YouTubeから見えるクリエーターの人生は輝いていて夢があることが多い(扇情的)。
という4条件がそろっており、親近感が湧くけど夢があり、自分もそのプラットフォームの参加者であるという帰属感は、
YouTuberと視聴者の関係性の強さ、近さを錯覚させる
ということです。
"自分もパブリシティを得られる可能性がある"という事実は、民主主義社会の現代にとって魅力的です。だから、多くの子供はYouTuberになりたくなっちゃうのです。好きなことやってて楽しそうだし。
疑似社会関係こそが、YouTuberの依存性を高める要因でもあります。
だって、身近な人がテレビに出たら見るでしょう? それと同じイメージです。
YouTuberは以上のように、YouTube上での固定客を増やしてくれます。だから、
- 登録者に応じた賞与(銀の盾, 金の盾, ダイヤの盾)
- 節目節目のプレゼント(クリスマスプレゼントやスーツケース、ジャージなどのグッズのプレゼント)
- クリエイター限定のイベントやサービス(Vidcon, YouTube fanfestなど)
というエンカレッジを怠りません。
そして、YouTuberはすごい、楽しい、かっこいい、憧れる、そんなイメージを定着させるのです。列記したように、YouTuberに対して運営が手厚いサービスを提供するのも納得です。お互いの間には明文化された雇用契約が無いにも関わらず、Win-Winな関係を築こうとしています。
これから、YouTube依存を逃れるにしても、その存在を無視できる時代ではありません。どのようにして折り合いをつけていくかを考えるべきでしょう。
おわりに
今回の記事はいかがでしたか? YouTuberという存在が、新しく、そして時流に適合していることが伝わっていたら嬉しいです。
YouTubeを創設した人、現在の運営陣は、マーケティング、PR戦略など、どれをとってもプロフェッショナルな人間ばかりです。そんな人たちが本気で考えたアルゴリズムなので、簡単には視聴者を放してくれません。
現在、YouTubeのアルゴリズムおよびプラットフォームは莫大な富を生み出しています。有名なYouTubeクリエーターになると、月収数千万ということを普通に耳にしますが、すなわちYouTube運営にはそれ以上の潤沢な資金が集まっているということに他なりません。
このように、あなたがYouTubeをやめられないのは、
- あなたの意志が弱いから
- あなたが自堕落な人間だから
とか、そういう話ではありません。YouTubeがヤバいのです。ここが伝えたかったことです。"YouTubeを視るのやめなさい"としかる人がいたとして、その人が今のあなたと同年代だったら、絶対同じことをしているでしょう。
以上、りけいのりがお届けしました。
参考文献
1) 松島倫明 (2019), WEIRD 地球のためのDEEPTECH, 35, 185.