本日も、りけいのりからお届けします。"科学をやさしく、おもしろく"をモットーに、科学的な観点から、様々な疑問や問題にお答えします。
今回のテーマは、新型コロナウイルスへの効果が期待されている薬剤の簡単な紹介を行います。というのも、ニュースを見ていて沢山の種類の聞きなれない薬剤が出てくると、混乱してしまいます。
なので、本記事ではこれらの薬剤の薬効について簡単に解説し、簡単にまとめます。
今回紹介するのは、次の治療薬です。
- ファビピラビル(アビガン)
- イベルメクチン(ストロメクトール)
- ナファモスタット(フサン)
- カモスタット(フォイパン,
サワイ) - シクレソニド(オルベスコ)
- デキサメタゾン(デカドロン)
これら、COVID-19に対する治療薬への理解を深めて、氾濫する情報に踊らされないようにしましょう!!
- COVID-19について
- ファビピラビル (アビガン)
- イベルメクチン (ストロメクトール)
- ナファモスタット (フサン)
- カモスタット (フォイパン, サワイ)
- シクレソニド (オルベスコ)
- デキサメタゾン (デカドロン)
- おわりに
- 参考文献
COVID-19について
まず、新型コロナウイルスに関連する用語が飛び交っているので、ここにまとめます。
- COVID-19: 感染症の名前 (ウイルスの名前ではない)。 "COronaVIrus Disease 2019"の略称1)。世界保健機関(WHO)による命名2)。
- SARS-CoV-2: COVID-19を引き起こすウイルスの名前。新型コロナウイルス。重症急性呼吸器症候群 (SARS: Severe Acute Respiratory Syndrome)を引き起こすウイルスの姉妹株としている2)。国際ウイルス分類委員会 (ICTV)による命名2)。
- 治療薬: 薬学の力を駆使して, SARS-CoV-2を撃退する薬。
- ワクチン: ヒトの有する獲得免疫を利用して、SARS-CoV-2に対する耐性をつけるための薬。
特に、SARS-CoV-2の感染拡大に対しては迅速な対応が求められることもあり、新規薬剤の開発ではなく、既存の薬剤を転用するドラッグ・リポジショニングの手法がとられています。この手法が取られていることが、様々な薬剤が注目されていることの原因なのです。
続いて、様々なワクチンの紹介です。
ファビピラビル (アビガン)
ファビピラビルは、治験データが収集され、COVID-19に対しての治療薬として有望視されています。以下、ファビピラビルに関する日本臨床微生物学会の言及です。
RNA ウイルスの RNA依存性RNAポリメラーゼ (RdRp) を選択的に阻害する新規な抗ウイルス剤で,富山化学工業株式会社 (現:富士フイルム富山化学株式会社) において抗インフルエンザウイルス剤として創製された薬剤である4)。
イベルメクチン (ストロメクトール)
イベルメクチンとは、1987年に開発された回旋糸状虫に対する経口駆虫薬です6)。現在、北里大学病院の研究チームが医師主導治験が開始されようとしている (2020/9/22現在) 7)。他の治療薬と比較すると大きな分子である。
ナファモスタット (フサン)
ナファモスタットは、急性膵炎への治療薬剤として、既に広く使われている9)。東京大学医科学研究所のプレスリリースから、ウイルスの細胞侵入過程をナファモスタットが阻害することを発表した9)。セリンプロテアーゼ阻害剤。
カモスタット (フォイパン, サワイ)
カモスタットは、構造的・薬効的にもナファモスタットと類似する治療薬。急性膵炎の治療薬であり, 現在までに広く利用されている9)。ナファモスタットと比較して、ウイルスの侵入過程を防ぐ薬効濃度は10倍量必要であるとの報告がある9)。セリンプロテアーゼ阻害剤。
シクレソニド (オルベスコ)
シクレソニドは、ステロイド系抗炎症薬の一種で、気道炎症抑制のために用いられてきました12)。この薬剤は、体内に取り込まれ、そこでの代謝を受けて薬効を発現するプロドラッグです。ステロイドに関しては、以前まとめたものがあるのでこちらをご覧ください。
デキサメタゾン (デカドロン)
デキサメタゾンはシクレソニド同様、ステロイド抗炎症薬の一種です。従来は、 口腔粘膜疾患治療剤として使用されてきました14)。オックスフォード大学がけん引するCOVID-19治療薬研究チームは、デキサメタゾンがCOVID-19の重症例を減少させることを報告している15)。
おわりに
以上6つの、COVID-19に対抗する有望な治療薬を紹介しました。構造的に類似するのもから異なるものまで、多種多様な薬剤が名乗り出ています。近年は計算科学が発展し、SARS-CoV-2の駆逐に対して有効である薬剤を、計算により求める動きもあります。
人類の平穏な生活が戻るように、素晴らしい薬が普及することを祈るばかりです。
以上、りけいのりがお届しました。
参考文献
1) UpToDate, 患者教育:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の概要(簡易). Accessed: 20200922.
2) 日経メディカル, 病名はCOVID-19、ウイルス名はSARS-CoV-2, Accessed: 20200922.
3) The structure and property were referred from PubChem, Accessed: 20200922.
4) 古田要介 (2019), [総説] ファビピラビル (T-705) -ウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼ阻害剤-, 日本臨床微生物学会, 29(2), 58-66.
http://www.jscm.org/journal/full/02902/029020058.pdf
5) The structure and property were referred from PubChem, Accessed: 20200922.
6) SUZUKEN, 腸管糞線虫駆虫薬 イベルメクチン, 琉球大学 第一内科, 平田哲生, Accessed: 20200922.
http://medical.radionikkei.jp/suzuken/final/030109html/index_2.html
7) 日経バイオテク, 北里大、新型コロナに対するイベルメクチンの治験の詳細が明らかに, 三井勇唯, Accessed; 20200922.
8) The structure and property were referred from PubChem, Accessed: 20200922.
9) 東京大学医科学研究所, 新型コロナウイルス感染初期のウイルス侵入過程を阻止、効率的感染阻害の可能性がある薬剤を同定, Access: 20200922.
10) The structure and property were referred from PubChem, Accessed: 20200922
11) The structure and property were referred from PubChem, Accessed: 20200922
12) 城西国際大学、シクレソニドは、COVID-19の治療薬になり得るか?、薬学部 薬理学研究室 田嶋 公人、Accessed: 20209022.
13) The structure and property were referred from PubChem, Accessed: 20200922
14) 医療用医薬品: デキサメタゾン, Provided by KEGGデータベース, Accessed: 20200922.
15) 日経メディカル, デキサメタゾン、COVID-19重症例の死亡を減少, 三和護, 20200619, Accessed: 20200922.